Wave Equation

波は、なぜ勝手に動くのか

弦の各点は、上下に動くだけです。横に移動している点は1つもありません。それでも、形だけが横へ進んでいきます。この不思議を1行で説明してしまうのが、波動方程式です。動かしながら読んでみてください。

ムーアAIのマスコット、モアくん

グラフの上をドラッグすると、注目する点を動かせます。数式のどこを見ているのか、その場で分かります。

両辺を同じ色にしてあります。等しいからです。左は「その点がどう加速するか」、右は「その点がまわりからどれだけズレているか」。この2つは同じものだ、というのが波動方程式の主張です。

注目点の位置 x
変位 u
速度 ∂u/∂t
まわりの平均 − u
加速度 c²∂²u/∂x²
エネルギー(運動位置 100.0%
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操作

注目点から左右に伸びる破線は「両隣を結んだ線」です。そこから縦に伸びる金色の矢印が、平均からのズレ=加速度になります。見やすさのため、両隣は少し離してとってあります。キーボードでも、グラフをクリックしてから左右キーで動かせます。

Three quantities

出てくる量は、3つだけです

変位 u

その点が、静かなときの位置からどれだけ上下にずれているか。曲線そのものと、その上に並ぶ粒です。

速度 ∂u/∂t

その点がいま上下どちらへ、どのくらいの速さで動いているか。粒の左側に出る矢印です。

加速度 c²∂²u/∂x²

その点が次にどちらへ引っぱられるか。粒の右側に出る金色の矢印で、まわりとのズレそのものです。

粒はどれも、真上と真下にしか動きません。横に移動している粒は1つもない、というのがこの図の一番の見どころです。

The right-hand side

加速度は「まわりとのズレ」で決まる

∂²u/∂x² は、教科書では「曲率」と呼ばれます。ただ、意味はもっと素朴です。その点が、両隣の平均よりどれだけ下にいるか。それだけです。

両隣の平均より下にいれば、上へ引き上げられます(加速度は上向き)。上にいれば、下へ引き戻されます。弦を細かいおもりとばねの列だと思えば当たり前で、ばねは自分の両隣としかつながっていないのですから、その点が感じる力は「両隣との高さの差」以外にありようがありません。

波動方程式は、この当たり前を1行で書いたものです。加速度まわりとのズレ。c² は、その引き戻しの強さを決める係数にすぎません。

谷(凹)では上へ、山(凸)では下へ。矢印の長さは、両隣を結んだ破線からの距離に比例します。平らなところでは矢印が消えます — まわりとズレていない点は、加速しません。
Why the shape travels

波は、右と左に分かれて進む

上下にしか動かない粒の集まりから、なぜ「横へ進む形」が生まれるのか。答えは、1次元の波動方程式の解がかならず次の形に書けることにあります。

u(x, t)=f(x − ct)+g(x + ct)

f は形を変えずに右へ、g は左へ、どちらも速さ c で滑っていくだけの関数です。どんなはじめの形も、この2つに分解できます。シミュレーションで「静かに置いた山」を選ぶと山が左右に割れるのは、比喩ではなく文字どおりこの分解が起きているからです。

上段が右へ進む f、中段が左へ進む g、下段がその和である実際の波形 u。下段の薄い破線は f と g をそのまま重ねたもので、太い線がその合計です。ふだんは破線と太い線がぴたりと重なり、すれ違う瞬間だけ太い線が2倍に持ち上がります。通り抜けたあとは、何事もなかったように元の形へ戻ります。
What c really is

運ばれているのは、物ではなく形

c は「粒が動く速さ」ではありません。形が伝わる速さです。海の波に浮かぶ浮きが、その場で上下するだけで沖へ運ばれないのと同じことです。

シミュレーションで c を上げると、山が端に届くまでの時間が短くなります。一方で、各点の上下運動そのものは激しくなります。加速度が c² に比例するのですから当然で、同じ形なら速い媒質ほど強く引き戻されている、ということになります。

端の条件を「吸収端」に切り替えると、波は端に着いたまま消えます。反射も定在波も起きません。「固定端」では上下が反転して跳ね返り、行きと帰りが重なって定在波になります。定在波は、進む波が2つ重なった結果でしかありません。

Conservation

何も生まれず、何も消えない

流体の「連続の式」の可視化が伝える核心は、質量は移動するだけで生まれも消えもしない、ということでした。波動方程式にも、同じ位置を占めるものがあります。エネルギーです。

グラフ下のバーが、それを示しています。明るい緑が運動エネルギー(動いている分)、濃い緑が位置エネルギー(弦が張られて曲がっている分)。2つは絶えず入れ替わりますが、減衰を 0 にしておけば合計はほとんど変わりません。谷を通過する瞬間に運動が最大になり、折り返しの瞬間に位置が最大になる — この呼吸が、波の正体です。

減衰を上げると合計が減っていきます。これは方程式に 2γ ∂u/∂t という項を足した場合で、そのぶん波動方程式ではなくなっている、ということでもあります。

連続の式波動方程式
∂ρ/∂t + ∇·(ρv) = 0∂²u/∂t² = c²∇²u
主役密度 ρ変位 u
言っていること中身の増減は、境界の出入りの差に等しい一点の加速度は、まわりとのズレに等しい
保存するもの質量エネルギー(減衰がないとき)
見た目粒子が境界を出入りする各点は上下するだけで、形だけが進む
時間の階数1階(そのまま流れる)2階(行き過ぎて戻る)

時間についての階数が、2つの式の性格を分けています。1階なら「そのまま流れる」、2階なら「行き過ぎて戻る」。波が振動するのは、右辺が力(加速度)として働くからです。

「動かせる教材」を、つくります

このページは、式を1行ずつ言葉に直しながら、その場で動かして確かめられるように作った教材です。同じやり方で、御社の設備・製品・業務のしくみも「動かせる説明」に変えられます。

社内教育、展示会のデモ、採用説明会の資料など。お問い合わせからお気軽にご相談ください。

ムーアAIのマスコット、モアくん

数値解法は1次元の陽的差分(クーラン数 0.35、格子点 221)。吸収端は1次のMur条件です。物理的な厳密さより、式の各項が目に見えることを優先しています。

シリーズ:熱は、なぜ広がる一方なのか(熱伝導方程式)渦は、なぜ規則正しく並ぶのか(ナビエ–ストークス方程式)。熱伝導方程式は右辺がこの式とまったく同じで、違うのは左辺が1階か2階かだけです。

着想:X の @PhilosophyOfPhy による連続の式の可視化。同じ考え方を波動方程式に置き換えて、ムーアAIが独自に制作しました。